0.営業活動のベース

営業チームは売上を上げることが使命ですが、売上を上げるための行動は2つだけです。

①自社取り扱い製品・サービスで顧客の課題を解決すること

②立てた目標を達成すること

この2つの行動を着実に実行することが売上を上げるためには必要です。

説明を進める上で、営業活動の前提となる基本的な部分について認識を統一したいと思います。

顧客の課題解決と目標を達成する為に必要な”案件管理” ”営業のプロセス” ”チームリーダーの役割”について説明します。

※基本中の基本ですので、そんなことわかってるわ、と思われるかもしれませんが、これ以降の説明で前提条件となるため、何卒ご了承ください

※現場は手間だと考えがちです。基本の重要性を丁寧に説明し、理解した上で業務に組み込んでもらうことが必要です

※営業に限らず何事においても、基本に忠実な活動が最も成果を上げやすいことは間違いありません。以下内容をご参考頂き、自社の実態に合わせた内容で見直ししていただくことをお勧めします

企業や組織が変われば、同じ単語でも意味合いが変化し、話しがかみ合わない、なんてことが発生します。たとえ同じ組織内であったとしても、個人の認識の違いによって、話が通じていなかった、など良く聞く話しです。

故に、単語や意味については説明の便宜上、以下の通り統一させていただきます。

案件管理

案件管理が出来ていないと売上の予測が出来ません。何となく売り上げが上がったではなく、売上を向上させるためには案件管理を出来るだけ厳密に行う必要があります。

図1 案件管理表_例
図2 案件管理表_例からの売上集計表

案件管理で使用する用語については以下の通りとします。

リード:展示会やWebイベント、MA(MQL)、提案訪問(SQL)などで顧客から問い合わせを頂いた状態の引合い (認知)

MQL=マーケティング活動によって獲得したもの SQL=フィールド営業が顧客訪問で獲得したもの

面談化  :リードから詳細説明や提案を求められ、実際に面談した状態の引合い(興味・関心)

商談化  :面談により、見積を提出し、顧客が予算獲得の動きをしている状態の引合い(比較・検討)

案件化  :商談により、顧客の予算が決定し、購入することが決まった状態の引合い(購買)

受注  :顧客から購入意思(注文書の発行、入手)を頂いた状態

失注  :他社の採用が決まった

消滅  :購入計画自体が無くなった

受注金額  :顧客と契約で合意した金額、もしくは見込み金額

発注金額  :手配先への発注金額、もしくは見込み金額

受注利益  :受注金額から発注金額を差し引いたもの(予定利益)

売上  :顧客に納品が完了した状態

売上金額  :確定した顧客への請求金額

売上利益  :売上金額から確定した発注金額を差し引いたもの(確定利益)

利益率  :受注利益÷受注金額×100

受注予定月  :顧客からの注文書入手を予定する年月

売上予定月  :顧客へ納品を予定する年月

受注確率  :競合との状況、有利、不利を%で表したもの

   20 % 競合有利 受注困難

   40 % 競合が若干有利

   60 % 当社が若干有利

   80 % 当社有利

   100% 注文書発行待ち

計上  :受注計画として見込むのか見込まないのか

リードタイム  :手配をかけてから納入されるまでの日数

納期  :顧客と約束した納入期限

※案件管理はシステム(ERPやSFAなど)に組み込まれていることが望ましいと思います。現在、案件管理がシステム上に無い場合、また、管理が出来ていない場合、図1 案件管理表_例を参考にしてください。

営業のプロセス

営業活動の工程”プロセス”の認識を統一します。プロセスを整理することで、営業活動においてどこの部分に問題があったのか把握が出来るようになり、営業担当者と打ち合わせする際にも課題の共有がしやすくなります。

⓪準備 最重要

営業プロセス ⓪準備

1.ターゲット顧客の設定(仮定)

※業態によって企業(Business)、一般消費者(Consumer)、製品(Product)それぞれの軸で考える必要があります

2.顧客ニーズを想定し、自社の商材・サービスでの課題解決案の策定

・提案資料の作成

・HPでの課題解決案の紹介

3.想定問答集の作成と練習

・顧客からの質問(価格、リードタイム、導入メリット、デメリット)に対する回答、話法の練習

①アプローチ(認知) 目的:リードの獲得

営業プロセス ①アプローチ

1.新規顧客へのアプローチ

・広告、展示会・セミナーなどイベント(リアル、Web)

・SNS発信(Twitter、Instagram、Facebook、LINE)

・電話(アウトバウンドのテレマーケティング)

2.リアクションのあった顧客への面談アポイント

・電話(インバウンドのテレマーケティング)

3.既存顧客へのアプローチ

・電話やメールでアポイント

・メール一斉配信(メールマーケティング)で反応を待つ

②面談(興味・関心) 目的:商談化へ進める

営業プロセス ②面談

1.冒頭

・挨拶、面談の目的と説明の所要時間

・自己、会社紹介

2.商品の提案

・想定される顧客の課題と解決案の説明

・質問への回答

3.次のアクションの合意

・見積提出、プレゼン資料の提出、サンプル品の提出、デモンストレーションの実施など

③商談(比較・検討) 目的:案件化へ進める

営業プロセス ③商談

1.プレゼンテーション(資料の提出、サンプル品の提出、デモンストレーション)

 ・ニーズの再確認

 ・取り扱い製品、サービスの提案で顧客の課題が解決可能であることの確認と合意

2.GPCTBA/C&Iの確認

 ・Goals(目標):達成いたい目標は何か

 ・Plans(計画):達成するまでの計画は

 ・Challenges(課題):課題は明確か(対応可能、不可能含めて)

 ・Timeline(スケジュール):希望導入計画を把握し、締切期限を明確にする

 ・Budget(予算):見積を提示し、使用可能な予算を明確にする

 ・Authority(権限):購入権限を持つのは誰か、また、そのサポート役は誰か

 ・Negative Consequences(マイナス要因):反対理由の具体的な想定

 ・Positive Implications(プラス要因):達成した場合の効果

※参考 取り扱い商材によってはシンプルなBANT+競合情報の方が運用しやすいと思います

 ・Budget(予算):見積提示(概算価格の提示)、相場観を共有する

 ・Authority(権限):顧客の中で購入権限を持つのは誰か、またそのサポート役は誰かを見定める

 ・Needs(要望):顧客が解決したい課題のより深い理解

 ・Timeframe(導入時期):承認ルートの明確化とスケジュールの確認

 ・+競合情報

3.次のアクションの合意

 ・想定される反対理由に対する説明資料の提示やデモ提案(競合比較含む)

 ・購入権限を持つ方、そのサポート役の方へのアプローチ(購買部門含む)

④案件化(購買) 目的:受注

営業プロセス ④案件

1.購入の意思確認

 ・採用のハードルを確認(競合、価格、納期)

2.購入権限を持つ方、そのサポート役の方と面談

 ・決定時期の確認、価格、納期交渉

⑤アフタービジネス 目的:リピート

営業プロセス ⑤アフタービジネス

1.納品(据付作業、設置作業含む)

2.消耗部品の案内、保守点検、定期点検の案内

3.使用方法などのレクチャー(継続的に)

4.更新時期の案内と提案

※営業組織において実施するプロセスを並べました。個々の項目においては、取り扱い商材によってより細かく設定するべき項目、また、不要であれば省いても良い項目があります。営業プロセス確認表を参考に、実態に合わせたプロセスの選択と、ポイント、トークスクリプトの整理を実施してください。営業プロセスの役割分担が明確ではない場合は、分担を明確にしてください。

チームリーダーの役割

チームリーダーは立てた目標を達成すべく、案件管理を行い、また、社内社外の関係者と協力して施策を考え、打ち出し、営業担当者を指導しながら、営業担当者とともに着実に実行することが求められます。

※自社取り扱い製品(特長、差別化ポイント、市場など)は当然熟知していること

⓪社内ルール、関係法令の理解、順守

・社内のルールはもとより、関係法令に関しても理解し順守に努める必要がある。ルールを理解していない場合、営業担当者がルール違反をした場合見過ごしてしまい、重大な損失に繋がる可能性がある

①担当エリアの市場把握

1.案件獲得策の策定と実行(営業対象顧客の把握と理解をし、具体策を立案)

・営業対象となる顧客がどこに、何件あるのか、また規模、業務内容、顧客が抱えている課題を理解し、営業活動計画を立てる

2.競合の把握

・規模、強み、弱み、差別化出来る点を明確にし、勝てるパターンを作る

②案件管理(営業担当者へのヒアリング)

※参考 図1 案件管理表_例

1.利益率(顧客への提示金額は適正か)

・目標としている利益率に達していない場合 ⇔ 受注への近道、安易な値引きをしていないか

・目標としている利益率を大幅に超えている場合 ⇔ 顧客がどこに価値を認めてくれているのか

 ※利益率の目標値は設定するべき。但し、数値だけが先行してしまい、将来性を考え低利益でも受注すべき案件も対応しないなど、機会損失を招く恐れがある。マネージャーが”その利益率”の意味を理解し、判断する必要がある

2.受注確率(確率の根拠)

・顧客の誰に確認をしたのか、どんな情報でそれを判断したのか ⇔ 感や希望的観測の排除

・20%:巻き返しの可能性はあるか ⇔ 諦める判断も必要

・40、60%:80%以上へ確率をUPさせるための手段 ⇔ 次回アクションの決定

・80%:不安要素の確認 ⇔ 待ってるだけで大丈夫なのか確認

3.計上(判断した根拠)

・受注確率60%以上の案件で未計上の場合はその理由 ⇔ 計上出来ない不安要素は何か

・受注確率40%以下の案件で計上の場合はその理由 ⇔ 逆転可能な要素は何か

・受注確率60%の案件で計上の場合はその理由 ⇔ 勝てる、決めての要素は何か

4.次回アクション(受注するための行動は何か)

・ヒアリングした状況と記載されている次回アクションに整合性があるか

・次回ヒアリングまで(いつまでに)に実施の合意

※ToDoリスト、スケジューラーやリマインダーに展開し、お互い忘れないようにする

共通のツールがない場合は案件管理表を印刷し管理する。但し、外出時紛失を避けるため社外持出し禁止を徹底

③営業プロセスとスケジュールの管理(営業担当者への指導)

・前述の営業プロセスの管理②面談化、③商談化、④案件化の部分を担当者が実行し、結果報告に基づき、次の作戦を考える、また、営業担当者が理想とする活動が出来なかった場合は、問題点を洗い出し、営業担当が改善できるようにする。

・週間予定表などを使用し、スケジュールの管理を行う

上長への報告と説明

1.売上集計(必要であれば受注集計も)を提出

・当月および先行3ヶ月の見通しのコメントを添付して提出、承認を得る

※参考 図2 案件管理表_例からの売上集計表

・目標に対して大幅に未達(80%未満)の場合は、挽回策を別途提出し承認を得る

2.意思疎通

・課題の共有と相談、具体策の立案と実行計画を明示し承認を得る

⑤ボトルネックの抽出と対策

 1.年間の統計などから、リード件数からの決定率を求め、目標達成に必要なリード数を導き出す

 ・必要受注件数:平均受注金額から目標達成に必要な受注件数を出す(目標金額/平均受注金額)

 ・”現時点でのリード件数からの”決定率:(受注件数/保有していたリード件数)

 ・必要リード件数:(必要受注件数/リード件数からの決定率)

 ※仮に年間5000万円の目標金額で、平均受注金額が100万円の場合、必要な受注件数は50件となる

必要受注件数:5000万円 ÷ 100万円 = 50件

昨年の実績として受注件数40件、保有していたリード件数が400件であった場合、決定率は10%

決定率:40件 ÷ 400件 = 0.1 = 10%

必要リード件数: 50件 ÷ 0.1 = 500件

 現時点で保有しているリード数が昨年同様の400件であった場合、リードが100件不足している状態と言える。このギャップを埋めるために、リードの獲得策と決定率の向上策、両方を考え実行する必要がある

 2.状態毎の決定率を求め、対策を打つ

・受注率(成約率):案件化から受注に至った件数から率を求める(受注件数/案件化件数)  

・案件化率:商談化から案件化に至った件数から率を求める(案件化件数/商談化件数)

・商談化率:面談化から商談化に至った件数から率を求める(商談化件数/面談化件数)

・面談化率:リードから商談化に至った件数から率を求める(面談化件数/リード件数)

・各率からどの部分を改善する必要があるのかを判断する

 顧客、商材、営業担当者ごとに算出し、比較し、対策をたてる

補足 営業担当者へのヒアリングの心構え(事実を正確に把握するために)

 1. 先入観の排除

・顧客や営業担当者のバックグラウンドから想像した内容を前提に話しを聴かない

・いつ、だれが、どんな言動をしたのかを出来るだけ正確に聴き、状況を判断する

・例え自分が望んでいなかった、想像していなかった結果であっても冷静に受け止める

2. 話しやすい雰囲気をつくる

・一方的に話しをしない、対話を心がける  

・後ろ向きな発言はしない、前向きな発言に終始する

・共に成長する、目標達成に向かって伴走する姿勢をみせる

3.決して怒らない(怒鳴らない、表情に出さない、無視しない)

・例え合意した内容を実行していなかったとしても、怒らない

・何故やらなかったのか、出来なかったのかを聴き、次回は出来るように共に考える ・やってはいけないこと、法令違反に繋がるようなことがあった場合は感情抜きに叱る

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