単語の認識統一、営業プロセスの整理、チームリーダーの役割を規定したので、いよいよ本題の少人数営業チームで効果を上げるためには何をすべきか考えてみたいと思います。
※3名~6名のチームをイメージして記載しています
プロセスの理解と練習(標準営業の型)
先ず必要なのは、営業担当者の活動をの質を上げ、高い再現性で活動をしてもらうことです。活動の質を上げるためには、営業プロセスの正確な理解と実行が必要です。
①営業プロセスとフロー、ポイントの正確な理解
そこで、前項で整理した営業プロセスを使用し、個別面談の上、営業担当者がどこまで理解しているのかを把握します。
理解していな部分に関しては、どうしてこの流れになるのか、またポイントなる点はどこなのか、トークスクリプトについても何故その言い回し、切り返しになるのか、理由を丁寧に説明し、理解を促します。
※理解の確認に関しては”第三者に矛盾なく説明できるか”テストの実施をお勧めします
②営業の練習
営業プロセスが正確に理解出来たら、次は実行するための練習を行います。
プロセス毎にトークスクリプトを使用し、社内でお客様役を立ててもらい、営業担当者が苦手としている部分のプロセスについて練習を行います。
リーダーは判定役として同席し、良かった点、悪かった点を営業担当者へフィードバックします。これを繰り返すことで、再現性が上がってきます。また、営業担当者のスマホなどで録画を行い、態度、話し方など客観的に確認すると、より質が上がっていきます。
※つまづきそうなポイントの演習問題を作成してください。リーダーが実際経験した難しい顧客、案件の内容を書き出してください
③標準営業の型を決める
①営業プロセスと②営業の練習の内容が決まったら、これを営業の型として決めます。これにより、営業組織内で案件打ち合わせの際、組織内全員が同じレベルで話しが出来るようになります。また、新たに配属された人員の教育にも使用することにより、営業の再現性を保ちます。
※営業現場ではイレギュラーなことばかり発生します。よって型は基本線だけとし、詳細は作成しないことをお勧めします。更新などの管理や、指導者の負担を減らす上でも営業フローに沿った簡単なものとしてください
営業担当者から案件のヒアリングを行う際は、営業プロセスをお互い確認しながら、案件が現在どこのフェーズにあるのか、また次の行動はどうすべきかを話し合いながら進めるようにしてください。これによりプロセスの抜け、漏れを防止することに繋がり、営業担当に営業の型が身についていきます。
少人数営業チームの役割分担
営業担当者の業務範囲は組織によってプロセスの⓪~⑤まですべてを一人の営業担当で完結することがスタンダードになっている組織もあると思います。
営業担当者が行う業務が増えれば増えるほど営業の質は低下していきます。仮に能力の高い営業担当が複数人在籍し、運営できていたとしても、その質を持続してくのは困難です。よって、営業担当者にはなるべく狭い業務範囲で責任・役割を明確にしていくことが必要です。
※少人数組織であればあるほど個人の能力に頼らず、練習さえ積めば誰でも一定以上の業務が可能な形にする必要があります。退職者が出た場合も対応が容易になり、また、個人の負担が軽減し離職者防止にも繋がると考えます
①業務分担
営業プロセスの大分類毎に担当を決めます。また、横断的に各担当のアシストを行う内勤営業を設定します。
※内勤営業は営業チームが3名の場合、アフターマーケット担当が兼任する形でも良いかもしれません、人員構成に合わせた現実的な分担の設定をお願いします
チームリーダー :⓪準備、①アプローチの2分類、マーケティング部分を担当
・前述のチームリーダーの役割にプラスしてマーケティング業務を担当します。リードの獲得を目指し、市場動向、顧客動向、業界動向を見定め、最適と思われる施策を実行に移します。受注の基となる質の高いリードの獲得が最も重要であり、この業務に集中する為、顧客折衝については営業担当にすべて任せます。(重要案件、重要顧客対応など特別な理由を除き)
営業担当 :②面談、③商談 ④案件の3分類、顧客折衝部分を担当
・顧客折衝全般を担当します。標準営業の型に従って活動し、商談化、案件化、受注を目指します。
アフターマーケット担当 :⑤アフタービジネスを担当
・納入後のビジネスを担当します。受注のベースとなる消耗品や保守、点検の取り込み促進や、顧客が当初の目標を達成できるように積極的に関わっていくことになります。リピートオーダーや、業界内での評判に直結する為、非常に重要な業務となります。
内勤営業 :顧客問い合わせの一次窓口、データの入力、納期管理を担当
・顧客問い合わせ一次対応を担当します。電話やメール、HPからの問い合わせに対して、担当者を判断してつなぎます。また、見積、販売管理などのデータ入力を行います。更には、受注した案件の納期管理を行います、状況の変化があれば営業担当と対応を相談し、対策を検討したり、各担当から依頼された資料の作成を行います。
②コミュニケーション
それぞれの担当は協力して、同じ目的”顧客の課題を解決する”ことに向かって業務にあたります。
コミュニケーションの手段としてCRMやSFAが導入されている場合は、情報の共有が可能ですので、チームリーダーが中心となり、適宜ミーティングを実施し、すり合わせを行います。CRMやSFAが導入されていない場合はSlackやTwitter、LINEなどのコミュニケーションツールを使用することで、常に情報共有することを意識づけしましょう。
※日報(CRMやSFAが導入されていない場合は)、業務報告がない組織はダメですが、ただ、報告すればよいわけではありません。長い報告は書く側、読む側、共に負担となります。営業担当者には、顧客打ち合わせ終了後(直後)、必須情報(顧客、案件、フェーズ、ポイント、次回アクション)を簡潔にコミュニケーションツールで報告するようにし、その中で意見やアドバイスがあれば返信する形が良いと考えます。(Twitterの1回140文字制限を利用し、報告は140文字以内と設定し、短文で報告する技術を養うのもありかと思います)
③業務の効率化
業務分担の変更し、今まで以上の時間を取られてしまっては意味がありません。今以上の効率化を進め、業務時間内で業務が完了出来る方法を考える必要があります。チーム内で時間が取られている業務について改善してください。
・週間スケジュールの定型化
顧客の要求に振り回され、効率が悪くなならいよう、曜日毎に大まかな行動を決めます。突発的な依頼があった場合は直ぐに受けるのではなく、調整し、顧客と交渉した上で期限を決めるようにします。
※顧客から依頼された際の期限交渉と調整が苦手な営業担当者はトークスクリプトの作成と練習をお勧めします。顧客から依頼された際、忙しいからとか、他スケジュールがあるからなど無碍な断り方は避けるようにください
・外出時間の短縮
営業で最も時間が取られるのは外出時の移動時間と次のアポイントまでの調整時間です。これを削減するためには、なるべく外出をしないことが必要です。
面談、商談についてはWeb会議とし、訪問は案件のみ。営業活動以外の業務、納品は営業が行わない宅配業者を活用する、物流はサードパーティーロジを活用する、現場作業の立ち合いもしない、どうしても必要な場合はその費用を顧客に転嫁する。など、外出を時間を減らす基本のガイドラインを設定することをお勧めします。
・単純なデータ入力は内勤営業へ移管、もしくは外注へ
少人数チームの場合、単純なデータ入力も営業担当者が行っているケースもあるかと思います。少量であれば問題ありませんが、業務を圧迫する量があるのは問題です。内勤営業へ移管する、または、入力専門業者へ外注する、定型フォームからの入力が多いのであればRPAの導入を検討する、どれが費用対効果が高いのか、比較検討し対応することをお勧めします。
・デジタルツールの導入と活用
デジタルツールは様々な種類があります、導入すれば業務効率が飛躍的に上昇します。しかし、業務内容に合ったもの、費用対効果が見合ったものを選択しないと無用の長物で終わります。慎重に、十分な比較検討をした上で導入することをお勧めします。また、市販のツールを導入するまでもないが、自動化したいものはPythonで自作することもお勧めします。
※今までの説明で出てきたSFA、CRM、Web会議、RPA、コミュニケーションツールについては次章で説明します。これからの時代、デジタル化の波は避けられず、この機会にPythonなどプログラムの学習をお勧めします
※営業担当が忙しい、ただどこに時間が取られているのか定量化出来ていない場合は、調査をお勧めします
④誰もが理解しやすい評価基準
組織変更に合わせ、チームに貢献したいと思わせる評価基準に変更をする必要があります。評価に関しては人が人を評価する以上、どうしても不満はでます。ただなるべく納得感が出るやり方を取る必要があると考えます。
一つの例として私が考える評価基準について説明します。評価は業績、能力、情意、成果の4項目で評価されることが多いと思いますが、業績については原資に直結ですので、評価対象とはせず、能力、情意、成果の3項目とします。能力は360度評価方式でチームメンバーが全員で業務に必要な能力があるか評価(メンバーが実力を認めているか)、また、情意に関しても能力同様360度評価で”人に親切であったか”の1点のみで評価します。成果についてはそれぞれの役割で達成基準を設け、達成したか、出来なかったかの2点で評価します。それぞれを点数化し、メンバー全員の平均点と比較し、最終評価とします。
360度評価は納得感が出やすい点、メンバーと協力して業務を進める意識づけ出来る点で採用しました。情意については誰に対しても親切であったかの1点のみとし、チーム内だけではなく社外でも評価されることを意識づけられるようにしました。
これにより、理解しやすく、チームに貢献することの2つの目的を達成します。
⑤補足
一般的に組織を成立させるものとしては、経営学の視点から組織論を提唱したチェスター・バーナードが提唱した、コミュニケーション、組織目的、貢献意欲の3つが有名です。
この中で私が一番難しいと考えるのがコミュニケーションです。組織は役職に応じて上下関係が発生するので、どうしてもコミュニケーションが一方通行になりがちです。そこで可能な限りフラットな関係性を保てるように意識してチーム運営をして頂くようにお願いをします。また、業務分担においては適材適所で考えて頂きたいと思います。
※人が優先、仕事がその次。今ある業務に人を当てはめる適所適材ではなく”適材適所”で考えてください。誰もがすべてのプロセスが得意なわけではありません。それぞれがお互いの弱みを補完しあって、協力して一つの目的を達成する為に進んでいくチーム作りを目指していただきたいと思います。
最も必要なのはチームリーダーの根気
ここまでで、営業活動のベース、組織のあり方を説明しましたが、チームリーダーの役割が非常に重要であることがご理解いただけたかと思います。
一つ一つの項目を見れば確認や作業も多く、ただただ大変さがのしかかってしまうかもしれませんが、マーケティングの一部の業務以外は、ルーチンワークとして組み込んでしまい、慣れてしまえば難しいものはありません。週間、月間、年間のスケジュールを決め管理し、継続できるようにしていただけましたら幸いです。
※スケジュールは共有のスケジューラーに落とし込みをお勧めしますが、共有のスケジューラーがない、現在は個人の手帳のみで管理の場合は、何らかの手段でチーム員とスケジュールの共有をお願いします。参考に週間スケジュール表を添付します
前述しましたが、誰もがすべてのプロセスが得意なわけではありません、これはリーダーであってもそうです。チームで同じ目的に向かって活動していきますので、リーダーであっても苦手な部分は他メンバーを頼り、チームとして活動することを意識していただければと思います。
何事においてもそうですが、基本的な決まり事(案件管理、営業プロセス、役割分担)を持続することが、継続的な結果を生み出すことに最も近い道のりです。
もし、説明させて頂いた内容の内、一つでも採用し、取り組んでいこうと思われる場合は、リーダーが根気強く、粘り強く、取り組む姿勢を出し、チームメンバーが後をついて行けるような理想のチーム作りを目指して頂きたいと切に願います。
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