専門商社が生き残るために

1980年代から今まで”商社不要論”は幾度となく唱えられきました、ところがこの商社不要論に当てはまる”総合商社”は顧客のニーズに応え、業態も変化させながら今も成長を続けています。90年代に入ってからもインターネット技術の発達から始まり、ECサイトの登場、認知向上、ECモールの急速な拡大、コロナによるデジタルコミュニケーション技術の急速な普及と変化がある度、商社不要論を危機と捉え顧客の課題を解決するためには何が必要なのかを考え対応してきた結果であると思います。

総合商社は変化に対応するために割けるリソースがあるからできた、これは間違いないと思いますが、根底には生き残るためには顧客が求めているものは何かを”考え続ける力”があるからだと思います。

未だ専門商社の中には商権に甘んじ、商品を横流しするだけで口銭を得ようとする企業もあります。デジタルツールが発達、普及した現在、メーカーと顧客の距離は非常に近いものとなっています。ただ単に商品を横流しするだけでは、商社の介在価値はなく、顧客からメーカーとの直接取引を宣告されてしまいます。

独自の知見を情報発信

メーカーとの直接取引を宣告されないために、専門商社としての価値、専門分野の知見を活かしたメーカーでは発信出来ない顧客の役に立つ、顧客の課題解決に繋がる情報を積極的に発信していくことが必要だと考えます。

※メーカーでは発信出来ない情報

・範囲の広いメーカーの組み合わせ提案(前工程から後工程まで)

・複数メーカーの実演比較(装着感、使用感、操作感)

・良い点だけではないユーザーの感想

・メーカー意見ではないフラットな目線での競合製品の比較

先ずは社内に蓄積された知見を集め、顧客の課題解決の手助けになるもの、オリジナリティがあるものを抽出し、説明資料を作成し、既存顧客にプレゼンを実施、そのリアクションによって資料の修正を行い、顧客へ情報発信をします。この手段としてはMAツールは必要ですが、メールマガジンが取り組みやすいと思います。また、メールマガジンと合わせてウェビナーの開催もお勧めします。

他の記事でも触れていますが、メールマガジン+ウェビナーの継続実施は中長期的に顧客のファン化を狙う施策になります。故に即効性はありません。しかし、継続購入顧客の囲い込みは売上拡大には必ず必要です。

※メールマガジンの運用例については”こちら”をご参照ください

顧客に対し情報発信を続けていくことで、専門分野に関しては、各メーカーに直接問い合わせするのではなく、まとめて相談した方が楽で、メーカーよりも良い提案をしてもらえる、と認識していただけるよう、介在価値を認めてもらえるよう、継続的な活動をお勧めします。

業態の変革

ハードルは高くなりますが、顧客に介在価値を示すために取り扱い商品の幅を拡げる検討も必要だと考えます。

①隣商材(販売している顧客が頻度高く購入している別の商品)

その商品が何か、参入障壁(競合、国内規制法、市場規模)はどんなものがあるか、を調査し可能性を探ります。もし既存顧客がその商品自体や購入プロセスに対して不満があればチャンスです。

当然そんなチャンスは中々巡ってはきません、ただ、商権のみで努力していない専門商社が販売していれば可能性はあります。チャンスを逃さないよう常にアンテナを張っておく必要があります。

②独自商品の開発

まだ日本にない海外商品の輸入代行やプライベートブランドの開発検討。これはノウハウが必要ですので、自社のみで完結することは難しいかもしれません。今までの知見で提携してもらえる企業を探す、もしくはコンサルタント企業へ依頼することが必要かもしれません。独自商品を有することで専門商社としての介在価値があがります。

③修理や点検の取り込み

取り扱い商品が機械や装置であれば、メーカー問わず簡単な修理や点検を行うことが出来れば、専門商社としての存在価値は高くなります。しかし、機械や装置が複雑なもの、人命にかかわるようなものは対応が難しいので除外する必要があります。いづれにせよ人的リソースが必要になります。

3つとも簡単ではありませんが、無駄、無理の先入観を取り払い、前向きにチャレンジすることをお勧めします。結果に繋がらなくとも、調査することによって得られるものは大きいと思います。

用語の補足説明

総合商社:取り扱い商品が多岐にわたる(例えとしてカップメンからミサイルまで)

専門商社:特定の分野に特化して商品を取り扱う

・総合商社系:総合商社で取り扱わないニッチな分野、特殊な分野の商品を取り扱う

・メーカー系:メーカーがバックにあり、そのメーカー商品を中心に取り扱う

・輸入系:海外から商品を輸入し取り扱う、国内におけるメーカーの代行

・独立系:独自で事業を行っている、特定メーカーとの商権や輸入商品のメーカー代行の組み合わせなど業態は様々

商権:特定顧客に対してや特定の商品についてメーカーの代行としての販売権

口銭:商社がメーカーと顧客との間に介在した際に発生する手数料・利益、中間マージンと表現する場合もある

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