2.デジタルツールはどこまで必要か

今までの説明の中で出てきましたデジタルツールや自動化プログラムについて、ごくごく簡単に説明します。デジタルツールは必要です、導入すれば導入した分だけの効果は期待ができます。ただ、営業形態に合わないものを導入してしまっては意味がありません。

既にご使用されているツールもあると思いますが、先ずは違いと種類を理解して、導入検討していただきたいと思います。

ツールの種類と概要

営業活動支援

①営業支援システム(SFA Sales Force Automation

営業で必要な情報を一元で管理するシステムです。

案件情報、顧客情報、活動の履歴を管理し、営業の進捗がリアルタイムでチームメンバーと共有が出来るなど、営業活動をサポートしてくれます。

※営業プロセスの②面談、③商談、④案件の情報や進捗がわかりやすくなり、リーダーとの案件打ち合わせが簡潔になったり、内勤営業とのコミュニケーションがスムーズになったり、なにより営業担当者自身が案件の管理をしやすくなります

②顧客管理システム(CRM Customer Relationship Management

SFAと機能が重複する部分も多いですが、SFAが案件を軸に設計されているのと比べ、CRMは顧客を軸に設計されています。顧客の情報管理や顧客からの問い合わせ(時期や内容、回答結果)管理が出来ます。

※営業プロセスの⑤アフタービジネスとの相性がよく、CRMを活用するとリピート受注への道をサポートしてくれます

※SFAもCRMも当然のことながら、担当者が情報入力を正確に、まめに行うことではじめて能力が発揮できます

マーケティング支援システム(MA Marketing Automation

所有しているメールリストにメールを配信し、メールの開封率やコンテンツのダウンロード率(コンバージョン率)を可視化し、リードを面談化までに育成することが可能です。(適切な製品情報提供やキャンペーン情報の提供により)

※営業プロセスの①アプローチ部分を効果的に支援してくます。しかし、効果的なメール配信の内容、面談化にまで持っていくためのシナリオを考える、運用できる人材が必須です。

※SFA、CRM、MAは顧客情報、案件情報など重複する情報が多いため、2つ以上導入する場合は連携して使用することをお勧めします

※メールマガジンの発行には”特定電子メールの送信の適正化等に関する法律”が適用されます。運用の際はMAツールのベンダーにいよく相談した上で開始してください

Webサイト認知向上活動の支援

CMSCMS Contents Management System

Webサイト制作の知識がなくても、制作、更新が簡単にできます。情報更新の度に外部業者に委託していては、時間も費用もかかってしまうので、導入をお勧めします。社内でHTML&CSSのコーディングが可能な方がいたとしても、誰でも情報更新が簡単に出来る点はとても便利です。

⑤アクセス解析ツール

Webサイト訪問者の属性や行動などが自動計測、集計してくれますので、作成したWebサイトの課題抽出が可能です。これは無料のGoogle Analyticsを先ず使用していただき、無料ツールで満足できない場合は有料ツールの導入を検討で良いと思います。

SEOツール(SEO Search Engine Optimization

検索エンジン対策用ツールです。検索エンジン(Googleなど)で検索結果が上位に表示されるように解析し、対策が取れます。HPでの認知向上が重要であれば導入は必須です。

Googleの考え方を理解し対策を取れればツールは必ずしも必要ではありません。が、ツールを導入すれば、専門知識がなくとも対策が取れますので、先ずは初心者向けツールの導入をお勧めします。

⑦その他

IP解析ツール:Webサイト来訪者の所属企業名がわかり、どんな企業に興味を持ってもらえているのかがわかり、その結果から営業戦略が立てられます。

Web接客:チャット画面やポップアップメッセージを出してWebサイト来訪者への応対をし、サイト離脱を防ぎます。

※④CMSは必須、⑤は無料のGoogle Analyticsでスタート、⑥SEOは人的余裕があれば初心者向けツールの導入、予算的余裕があれば解析と対策まとめてプロに依頼、⑦その他は人的にも予算的にも余裕があれば導入の検討をお勧めします

※Webサイトで行うマーケティングは運用できれば”非常に効率的な手段です。少人数組織だからこそ導入、運用を検討する必要があると思います。

コミュニケーション支援

Web会議ツール

すでにZoomやMicrosoft Teamsを使用し、Web会議をを実施していると思います。現在Web会議だけでウェビナー対応バージョンが未契約である場合は契約の検討をお勧めします。ウェビナーは③MAと連携して配信することもあると思いますので、③MAと相性の良いもの選定をお勧めします。

※ウェビナーはファン顧客の育成にはとても有効な施策です。短期的な効果は全く期待できませんが、中長期的(3~5年)のスパンで効果が期待できますので、1回/月以上で定期開催をお勧めします。(メール配信もウェビナー同様、短期的な効果が期待できませんが長期で効いてきますので、メール配信+ウェビナーの継続をお勧めします)

⑨ビジネスチャットツール

チャットは電話のように相手の都合を気にすることなく、また、メールの様に宛先を書いて1件1件送信することなく、気軽にコミュニケーションをとることが出来ます。Web会議で記載した Microsoft Teamsにもチャット機能がありますので、ビデオチャット含め活用できれば、コミュニケーションの活性化に繋がります。

※⑫グループウェアシステムにもチャット機能があるもの多いですが、社内だけではなく、社外とのやり取りにもチャットを使用したい場合は、社外にも対応したビジネスチャットツールを選定する必要があります。

管理部門含めた全体的な支援

今まで述べた営業活動に関するツールからは外れますが、簡単に説明します。営業活動に関するツールの導入時には以下システムやツールとの連携も重要になってきます。営業組織だけではなく、会社全体のシステムやツールとの連携や相性も考えてツール選定をするようにお願いします。

⑩統合基幹業務システム(ERP Enterprise Resources Planning

基幹システムとは販売管理や会計管理、人事管理などを支援するものが個別のシステムになっており、それぞれの業務を個別に支援しています。これに対しERPはその個別であったデータを連携し経営状態の見える化を行い、市場の変化に素早く対応できるように支援するシステムのことです。

⑪ビジネスインテリジェンスツール(BI

ERP、SFA、CRM、Webサイトのデータ、外部データ(購入した市場分析データ)、その他のデータを繋ぎ、可視化して課題(利益、市場、競合など)を発見し、経営の意思決定の支援をするシステムです。企業のほとんどがデータはあるが膨大すぎる、かつ、保存場所がバラバラ(システムが違う)、分析したいが人的リソースは割けない、分析手法も解析手法も知見がない状態です。これを解決、支援するシステムです。

⑫グループウェアシステム

社内の情報共有(スケジュール共有や掲示板、チャットなどを使用して)を円滑にするシステムです。メールやワークフローを統一し、クラウド型にすれば、社内外どこにいても使用できるため、外勤が多いことや、在宅勤務でコミュニケーション不足になることを防ぐことができます。コミュニケーションの活性化には必要なツールです。

⑬ワークフローシステム

経費処理、交通費精算、休暇申請や稟議などの申請書類を電子化して、ペーパーレスや決済までの時間短縮が可能です。⑫グループウェアシステムに機能が組み込まれていることも多いです、申請ルートが複雑、現在の申請書フォーマットの変更ができない、もしくは特殊な申請などがなければ、ワークフロー機能付きグループウェアシステム導入で良いと思います。

RPARobotic Process Automation)

PC上で行っている作業(毎日、多量に処理が必要な業務)を記録し、ロボットが自動で実行するソフトウェアです。入力、確認作業で業務過多になっている、属人的な処理で担当者しか業務を把握していない、ミスが多くその処理で時間を割かれているなどがあれば導入の検討をお勧めします。AIと組み合わせより高度な処理を学習しながら、改善しながら、進めるソフトウェアも販売されています。

何を導入すべきか

各ツールの概要はご理解いただけたかと思います。

販売されているツールは高機能なものから初心者向けまで数多くあり、また、一つの製品で複数のツール機能を持っているものも多く存在します。その中で最適なものを選定し、導入し、運用をして初めて、効率化、高い効果が得られます。

先ずは、営業活動の効果を上げるために整理した営業プロセスで、どの部分を改善する必要があるのかを明確にし、優先順位をつけ導入を検討してください。

仮に営業プロセス②面談③商談を効率化したい場合にはSFAを軸に検討してください。SFAは国内で20社以上のベンダーがありますので比較が大変です、比較サイトなどを利用して、自社にあっているであろうベンダーを複数社選定し、資料請求をし、話を聞いても良いと判断したベンダーにだけ説明を求めてください。比較するベンダーが多ければ多いほど時間が取られてしまいます。

ポイントとしては(どのツールでも共通)

使いやすいかどうか、営業担当者が持続的に使用していけるか

欲しい機能が搭載されているか、不要な機能は多すぎないか

他のツールとの連携は簡単か(費用は発生するのか)

導入後のサポート体制はどうなっているのか(費用は発生するのか)

導入した場合の効果と投資費用のバランスはとれているか

選定したら、導入後の運用ルールの策定を行い、ルールの徹底を社内にアナウンスしてください。ベンダーのカスタマーサクセスがしっかりしていれば、定期フォローもしてくれますが、社内の運用責任者が軌道に乗るまでは社内のフォローをしていくことが重要です。

繰り返しになりますが、ツールは導入、運用出来れば効果が出ますので、今、弱いと思われる部分、改善が必要だと思われる部分は導入の検討をお勧めします。

ただ、選定から運用まで人手が取られますので、人的余裕も必要です。また、効率化で業務が減ることもありますが、別な業務が発生しますので、ツールの導入=単純に楽になる ではないことを社内で理解を進めて頂くことも必要です。

個人的には前章でも述べた通り、コミュニケーションが最も難しいと考えています。コミュニケーションを充実させるツール、チャットやスケジュール共有の導入、運用がされていない場合は優先順位高く導入の検討されることをお勧めします。

ECサイトについて

現在、商品・サービスを販売する上でECサイトは避けては通れない時代となりました。今後も市場規模は拡大していきます。

現在取り扱い製品をECサイトで販売していない場合は、例えどんな製品群であっても検討をお勧めします。販路を拡げる点では、低コスト低効率で対応が可能になります、全国、場合によっては全世界に販売が出来る可能性があります。

現時点で顧客に向け製品・サービスを提供していると思いますので、あらためてEC用の製品写真の撮り直しや、説明文の作成がなければサイトをSaaS型かモール型か選択するだけで特別な準備も必要ありません。特にモール型であれば、ベンダーセントラルがほとんどの作業を手伝ってくれます。

出店後は顧客の誘導を行う必要がありますが、これは前述のWebサイト認知向上活動の支援系のツールを使用し、またSNSで発信することで、”需要者に製品の魅力が伝われば”、受注に繋がります。

また、MAで定期的に情報発信していれば、人手をほとんどかけずにリピート受注を狙うことも可能です。ただ、これについても運用出来るまで時間がかかります。(アイテム数にもよりますが)立ち上げ時は、運用者の確保をしてから計画的に進めることをお勧めします。

マーケティング専任者は必要か

MAを使用したリードの育成やWebサイトを使用した認知向上策は、運用出来ればとても効果的、効率的な手段です。ただし、運用するためには製品・サービスに関する深い知識+デジタルツールを使いこなす知識+インターネットを使用する上でのモラル(SNSで炎上しないために)が必要です。

専門性が上がる分、専任者の設置は可能であれば設置した方が良いと考えます。ただ、マーケティング専任者が施策でリードを獲得し、営業担当に情報を渡しても、

営業担当は自ら獲得していないリードに興味を示さない

マーケティング専任者は現場がわかっていない、施策で獲得したリードをフォローする価値はない

と協力が得られにくいとの話しをよく聞きます。これでは折角の投資が無駄になってしまいます。

その点から、マーケティング専任者の設置ではなく、デジタルツールを使用した作業者の設置が良いと考えます。

リードの獲得、育成のシナリオを考える作業はリーダーの役割です、ただ作業までが業務負荷の観点から不可ですので、実際のツールを使用した作業に関しては、作業者(可能であれば専任者)を設置しての運用が良いと考えます。

リーダーが考えたシナリオであれば、営業担当の納得感もあり、率先して協力してくれるはずです。何度も繰り返しになりますが、ツールを導入し運用出来れば効率は格段に上がります。ただ、その運用のために人手がかかります。特に導入初期段階、立ち上げ段階では相当な労力が必要です。

ツールのベンダーも最大限協力していただけますが、製品やサービス、その売り方を熟知しているわけでありません。全てをお任せするのではなく、出来るだけ効果が得られるように主体的に導入に関わって行く気概を持って、 導入検討、導入、安定運用までやり切っていただきたいと思います。

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